福井県鯖江市河和田

Spot.06 中山公園近くの蛍 Kawada, Fukui

梅雨入りが近づく、6月。この時期は、気持ちのいい春が過ぎてしまって、かといって本格的な夏はまだ少し先で、これといった楽しみが少ない季節でもある。

そんなある日、河和田は蛍がよく出るらしいという噂を聞いて、中山公園近く川へ向かった。

河和田の外で生まれ育ったぼくとしては、蛍というのは本の中で読んだことのあるものの一つに過ぎなくて、どこか遠くの場所にいる生物のように感じていた。

車から降りて川へ向かって進んでいくと、さっそく蛍が見えてきた。3匹くらい、ふわふわと浮かんでいるのかと思っていたのだが、その予想をはるかに上回るたくさんの蛍がいた。

川のほとりには本当にたくさんの蛍がいて、一つ一つが空間を切り裂くように飛び交い、儚くも幻想的な光を放っていた。水面に蛍の光が反射すると、多くの星が瞬く小さな宇宙のようにも見えた。

この川の近くに住む人は、毎日この美しい蛍を見ているのだなと思うと、羨ましくもあり、少し不思議な気分にもなった。

ぼくから見た蛍は、わざわざ見にいく「特別」で、河和田に住む人々から見る蛍は「日常の風景」。

特別な気持ちで見る蛍も綺麗だったけど、仕事終わりにふと見る蛍、ちょっと散歩に出かけて見る蛍は、少し違った見え方をするのだろう。

子どもの頃に、蛍を追いかけ手の中で照らした記憶は、どこかで読んだ本の話ではなく、一生の自分ごとの思い出として残るのだろう。

多くの人にとって「何もない6月」は、きっと河和田では「特別な6月」なのだ。

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