福井県鯖江市河和田

Spot.02 おこない Kawada, Fukui

この町では"おこない"と呼ばれる伝統行事が、1月の第2日曜日に開催される。

開催地となるのは、敷山神社。この神社が、いつの時代にどういった経緯で建立されたのか、正式には分かっていない。
けれど、おじいさんの、そのまたおじいさんよりもっと前、遥か遠い昔から河和田の地にあったということは確かだ。

おこない当日、敷山神社には国旗が掲げられる。

伝統を重んじ、祝い事の時には2本の日本国旗を斜めにかけるらしい。
ゆらゆらと1月の寒さに揺られた白と赤の二色が、人々をお出迎えする。

ふと横を見ると、いつもはスッと済まして立っている灯篭も、今日はその時を待っているみたいだ。
辺りを見回すと一人、二人と人が集まり、いつの間にかそれは小さな人の塊になり、やがて大きな群衆へと姿を変えていった。

「いよいよ始まるのか。」

人が増えるにつれてソワソワし始める。

気づけば何百人という人だかりが、辺り一面を埋め尽くしていた。
今年厄年や還暦になる方々は上にいて、餅を撒く準備をする。

「ドンドコドンドンドコドン」

太鼓の音とともに、若い地元の男性が勢いよく駆け出してきた。

大きな竹とそこに括り付けられた米俵を担ぎ、いろんな方向へ突進をしていく。
河和田の若者たちの威勢の良いパフォーマンスのあと、いよいよ本番の餅まきが始まる。

上から勢いよく投げられる餅とともに、その下では多くの人が投げられた餅をとろうと必死になる。

あれよあれよというまに減っていく餅とは反対に、伸びる手は一向に止む気配はない。

投げる方も、それに呼応するように、ひとつ、またひとつと投げていく。

地元の方々が大事に守り続けてきたこのお祭りは、次の代にも、そのまた次の代にも、ずっと受け継がれていくことだろう。




おこないが終わると、さっきまでの賑いが嘘のように、辺りは静けさに包まれた。

立派な灯籠のすぐ横には階段があって、その階段を十数段登ったところに「漆器神社」がある。普段は中は非公開のようだが、今日はお祭り。漆器神社の中で二人の男性が酒を交わしていた。

漆器神社に入ってみると、天井には無数の漆器が飾られていた。河和田に住む漆器の職人さんたちが、手掛けたものだそうだ。

一つ一つの漆器が繊細で、個性があって、見れば見るほど、河和田の職人さんたちの技量の高さを感じる。

壁面を見ると、天井の漆を奉納した職人さんや、商人さんの名前が書いてある。今も活躍している職人さんや、その先代の職人さん…。今も存続している工房、今はもうなき工房…。

ずらっと並んだその名前を見ていると、河和田の人々が紡いできた時の流れを感じる。多くの人たちが、遥かな時代を経て、伝統産業であるこの漆器をつくり繋げてきたのだ。

漆器神社に祀られている神様は、この河和田の地で活躍してきた、漆器に携わった全ての人々なのではなかろうか。彼らの魂が、この神社に宿っている気がしてならない。


※ 漆器神社の中は、普段は非公開ですが、見学をご希望の方は河和田町会館まで、お問い合わせ下さい。(TEL: 0778-65-1987)

ここへの地図